鈴木壯兵衞

すずきそうべえ

そうべえ国際特許事務所

[ 弘前市 ]

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コラム

 公開日: 2018-06-07  最終更新日: 2018-06-08

第46回 幼児が発明した特許(その1)

 新聞各紙によれば、日本政府は2019年10月から幼児教育・保育の無償化を全面的に実施する方針を2018年5月28日までに固めたと報道されている。2017年12月8日に政府が「人づくり革命」の経済政策パッケージを閣議決定した際には段階的な幼児教育の無償化の実施計画であったが、半年前倒しにして全面実施するもようである。

  このコラムの第41回~第44回では日本の小学生の発明を紹介し、第45回では2歳の幼児が発明した特許を紹介したが、今回は英国の3歳の幼児が発明した英国特許を紹介する

      §1 英国特許第2438091号は3歳の幼児が出願した発明
      §2 幼児の知財教育にアニメが役に立つか

§1 英国特許第2438091号は3歳の幼児が出願した発明

 英国では日本よりも1年早く小学校に通うので、5歳未満の子どもは日本の保育園に近いデイ・ナーサリー(day nursery)又は日本の幼稚園に近いプリスクール(pre-school)のいずれかに通う。ナーサリー(保育園)には公立無償のナーサリーと、私立有料のナーサリーがある。プリスクールにも公立無償と、私立有料のプリスクールがあり、親はいずれかを選んで通園させる。

 英国中部のダービシャー(Derbyshire)州の温泉町バクストン(Buxton)に住むサムエル・トーマス・ホートン(Samuel Thomas Houghton)君は、大きいゴミと小さいゴミを一緒に掃ける「改良型ほうき(Improved broom)」を、サム君(サムエル君)が3歳になった2006年に発明した。

【図1】サム君の獲得した英国特許第2438091号の図面の一部

 図1に示すように、サム君の発明では、大きいゴミ用に長い柄を有する第1のブラシ(14)と、小さいゴミ用に短い柄を有する第2のブラシ(24)を弾性接続手段(30)で結合し、第1のブラシ(14)に第2のブラシ(24)が追随して自在に動けるようにしている。

 幅が狭い第1のブラシ(14)のヘッド(16)には長い毛(18)が荒く設けられている。第2のブラシ(24)のヘッド(26)には短い毛(28)が密に設けられている。

 特許弁護士である父親のマーク博士(Dr Rev Mark Houghton)は、約200ポンド(約4万円)で英国特許第2438091号の特許権を購入したそうである。

 2008年4月16日付けの英国BBCニュース等によれば、サム君は「大人になったら発明家になりたいかなんてわからないけれど、この特許発明の件は楽しかった("I don't know if I want to be an inventor when I grow up but this was fun.")」と語っているという。
 

§2 幼児の知財教育にアニメが役に立つか

 サム君の英国特許第2438091号は年金の不納によって2012年に放棄されており、特許の権利は4年間程度しか存続していない。父親のマーク博士はサム君の知財教育のために特許出願させたのであって、製品化による利益を目的としたものではなかったと思われる。

 サム君は、英国のアードマン・アニメーションズ (Aardman Animations Ltd)のニック・パーク(Nick Park)監督が制作したアニメ映画「ウォレスとグルミット(Wallace and Gromit)」を見て、発明に興味を持つようになったという。

 このアニメ映画は、英国特許庁の「すばらしいアイデア・キャンペーン("Cracking Ideas" campaign)」の一環のようであるが、自称天才発明家のウォレスの発明品によって、犬のグルミットがさまざまなトラブルに巻き込まれるという内容である。グルミットは言葉は話させないが、字が読め、機械工学にも通じているしっかり者である。

 サム君が3歳のある日、父親のマーク博士が枝などの大きいゴミと小さいゴミでほうきを使い分けていることにサム君が気づき、英国特許第2438091号に記載されたような2本のほうきをゴムで束ねたツーヘッドの「改良型ほうき」を発明したという。

 このコラムの第45回の図4の説明で、未就学児童に知財の勉強をさせるのは難しいと述べた。幼児の知財教育は、いかにしたら発明に興味を持たせることができるかということにあろう。

 この点でアニメは有効な手法となりうると思われる。2005年に制作された「ウォレスとグルミット」シリーズの『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!(Wallace & Gromit: The Curse of the Were-Rabbit)』は宮崎駿監督の『ハウルの動く城』らを抑え、第33回アニー賞及び第78回アカデミー賞の長編アニメ映画賞を受賞している。

 第33回アニー賞では『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』が作品賞、監督賞、音楽賞、声優賞、美術賞等の10部門を独占である。


       辨理士・技術コンサルタント(工学博士 IEEE Life member)鈴木壯兵衞でした。
        そうべえ国際特許事務所は幼児の発明を含めた多様な発明の段階を支援します。
              http://www.soh-vehe.jp

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